「今乗っているハイエースをキャンピングカーにしたい」「自分で作る時間や技術はないけれど、プロに任せたい」。そんな方に選ばれているのが持ち込み架装です。手持ちの車や自分で手配した車をビルダー(キャンピングカー製造会社)や専門店に預け、ベッドや電装、断熱などを施工してもらう方法です。

この記事では、持ち込み架装の流れ、事業者が公開している価格をもとにした費用の目安、架装メニューの例、8ナンバー化する場合の手続き、新車コンプリートとの違い、依頼前に確認したい注意点を解説します。自分で作業する方法を知りたい方は自作キャンピングカーの作り方をご覧ください。

持ち込み架装とは?キャンピングカーに改造する仕組み

持ち込み架装とは、ユーザーが用意したベース車両をビルダーや専門店に持ち込み、キャンピングカー仕様の内装や設備を取り付けてもらう依頼方法です。「架装(かそう)」は、ベース車両に家具や設備を追加して特定の用途向けに仕上げることを指します。

通常、ビルダーの新車コンプリート(完成車)は、ビルダーがベース車を仕入れて架装し、登録まで済ませて納車します。持ち込み架装では、車両の調達をユーザーが担い、ビルダーは架装部分を担当します。

持ち込み架装が注目されている理由

背景にあるのが、ベース車両の供給不足です。大手ビルダーのトイファクトリーは、2026年7月1日からハイエースベースのキャンピングカーの新規受注方式を一時的に変更し、ユーザーがトヨタディーラーでベース車両を購入・手配して持ち込む方式にしたと発表しました。発表では、2026年6月末時点でもハイエース キャンパー特装車などの納期が全国的に未定であることが理由に挙げられています。

ビルダー側がベース車を確保しにくい状況では、すでに車を持っている人や自分で車両を手配できる人にとって、現実的な選択肢になります。

向いている人

  • すでにハイエースやキャラバン、軽バンなどを所有している
  • 中古車を自分で探して、総額を抑えたい
  • DIYの時間や工具がなく、仕上がりの品質をプロに任せたい
  • 必要な装備だけを選んで追加したい

新車コンプリートとの違い

持ち込み架装とビルダーの新車コンプリートには、それぞれ向き・不向きがあります。

項目 持ち込み架装 新車コンプリート
ベース車の調達 ユーザーが手配 ビルダーが手配
費用 手持ちの車や中古車を使えば総額を抑えやすい 車両代と架装費をまとめて支払う
自由度 一部施工からフルオーダーまで選べる事業者もある モデルごとの仕様から選ぶ
納期 車両があれば製作期間のみ ベース車の供給状況に左右される
登録手続き 事業者により代行範囲が異なる 登録済みで納車されることが多い
保証 架装部分と車両本体で窓口が分かれやすい 窓口が一本化されやすい

すでに車を持っている人や、手配できる車両がある人にはこの方法が向いています。一方、車両選びから登録、アフターサービスまで任せたい人は新車コンプリートが安心です。新車購入の流れはキャンピングカー新車購入ガイドで解説しています。

持ち込み架装の流れ

事業者によって細部は異なりますが、一般的には次のような流れで進みます。

1. 問い合わせ・ヒアリング

車種・年式・ボディサイズ(ナロー/ワイド、標準ルーフ/ハイルーフなど)を伝え、用途や予算を相談します。奈良県のオーダーメイド中古車専門店は、問い合わせ時に車種・年式・写真を送るとスムーズだと案内しています。

2. 仕様の提案・見積もり・契約

レイアウトや装備を決め、見積もりを受けて契約します。既存モデルの仕様をそのまま載せるパッケージ型と、レイアウトから設計するフルオーダー型を選べる事業者もあります。

3. 車両の入庫・製作

契約後に車両を預け、家具製作や電装、内装の施工が行われます。茨城県のKYP:CS(株式会社イイダ)は、自社工場での製作期間を約2〜3か月とし、ヒアリング・見積もりに約1か月、最終確認・検査と納車に約1か月を目安として示しています。

4. 検査・登録・納車

8ナンバー(キャンピング車)にする場合は、構造等変更検査を受けて車検証の記載を変更します。登録の手続きを事業者が代行するかどうかは、契約前に確認しておきましょう。

車両を買う前に相談するのが鉄則

これから車両を購入して持ち込む場合は、購入前にビルダーへ相談することが大切です。トイファクトリーは、架装にはフル型式やメーカーオプションなどの条件が重要になるため、ディーラーで契約する前に担当営業または正規代理店へ相談するよう求めています。グレードやボディサイズが合わないと、希望のモデルを架装できない場合があります。

キャンピングカー架装工場の作業場に並ぶ白いハイエースバン、スライドドアが開いて家具の取り付け作業中、明るい照明、写実的、文字なし

持ち込み架装の費用相場

費用は、架装の範囲と車種によって大きく変わります。以下は、各事業者が公式サイトや発表資料で公開している価格の例です(車両代は含みません)。

事業者・プラン 対象車両 架装費の目安
オーダーメイド中古車専門店(奈良県)基本仕様 ハイエース、アルファード、デリカ、セレナなど 49.8万円〜(車両により変動)
Carstay「SAny.VAN」車両持ち込み ハイエースDXバン、キャラバンDXなど 約195万円〜(税込、2024年2月の発表時点)
KYP:CS「縁」 ハイエースナロー標準ルーフ 292万円〜(税込)
KYP:CS「ルーチェットナロー3.0」 ハイエースナローハイルーフ 320万円〜(税込)
KYP:CS「ルーチェットナロー Type C」 ハイエースナローハイルーフ 335万円〜(税込)
KYP:CS「ルーチェット」 ハイエーススーパーロング 380万円〜(税込)

※KYP:CSとオーダーメイド中古車専門店の価格は2026年10月時点の公式サイト掲載価格です。SAny.VANは2024年2月の発表時点の価格のため、最新の価格は公式窓口で確認してください。

価格差が生まれる理由

ベッドと簡単な内装だけで済ませるか、シンク・給排水・サブバッテリー・外部電源まで備えた本格仕様にするかで、費用は数倍の差になります。たとえばSAny.VANの標準装備には、スライド型ソファベッド、10Lタンク付きのシンクとキャビネット、カセットコンロ、ポータブルバッテリー(EcoFlow RIVER 2 Max)、外部電源、LEDダウンライト、クッションフロア、遮光カーテンが含まれます。

また、架装費とは別に登録諸費用がかかる点にも注意が必要です。Carstayの発表でも、架装費とは別に登録諸費用が必要と記載されています。

総額は「車両代+架装費+諸費用」で考える

総額は、ベース車両の価格に架装費と諸費用を足した金額です。ベース車の相場や新車コンプリートの価格帯はキャンピングカーの値段相場で解説しています。見積もりでは、架装費・オプション・登録費用・陸送費を分けて提示してもらうと比較しやすくなります。

持ち込み架装の主な架装メニュー

依頼できる内容は事業者ごとに異なります。公式サイトで対応範囲を公開している例を紹介します。

一部だけの施工も相談できる

フルセットの架装だけでなく、必要な部分だけを頼める事業者もあります。KYP:CSは、ベッド製作、電装強化、エアコン取付などの一部施工にも対応すると案内しています。

主なメニューの例

メニュー 内容の例
ベッド・家具 ベッドキット、カウンターベッド、収納棚、テーブル
断熱・防音 壁・天井・床への断熱材や遮熱・防音材の施工
床・内装 床張り、壁・天井パネル、カーテン
電装 サブバッテリー、リチウムイオンバッテリー、インバーター、外部電源
空調 FFヒーター、12Vクーラー
給排水 シンク、給水・排水タンク、ギャレー

栃木県日光市のカスタマイズファクトリーは、車両持ち込み架装を受け付けており、FFヒーターや12Vクーラー、リチウムイオンバッテリー、インバーター、サブバッテリー、床・ベッドの内装製作、断熱工事などを対応範囲として挙げています。

施工事例:未登録のハイエースを8ナンバーに

愛知県岡崎市のハイエースカスタム専門店NONIDEL(ノニデル)は、新車未登録のハイエースを山口県から持ち込んで架装した事例を公開しています。遮熱・防音加工、床張り、カウンターベッド、給排水付きのコンパクトギャレー、横向き座席用の2点式シートベルトなどを施工し、8ナンバーのキャンピング車として仕上げています。

電装まわりの仕組みを事前に理解しておくと、打ち合わせがスムーズです。容量の考え方はサブバッテリーの解説記事を参考にしてください。

ハイエースの車内に取り付けられた木製のカウンターベッドと小型シンク、温かい色のLED照明、断熱施工された壁、写実的、文字なし

8ナンバー化する場合の構造変更

持ち込み架装でキャンピングカーに改造しても、必ず8ナンバーにしなければならないわけではありません。ただし、8ナンバー(キャンピング車)として登録したい場合は、構造要件を満たしたうえで手続きが必要です。

構造等変更検査とは

国土交通省の自動車検査登録総合ポータルサイトによると、すでに登録されている車の長さ・幅・高さ、乗車定員、最大積載量、車体の形状、用途などが変わる改造をした場合、使用者は使用の本拠を管轄する運輸支局等に車を持ち込み、構造等変更検査を受ける必要があります。申請には、申請書、自動車検査証、自動車検査票、点検整備記録簿、自賠責保険証明書、委任状、手数料納付書、自動車重量税納付書などが必要です。

キャンピング車の主な構造要件

国土交通省の通達では、キャンピング車の要件として、次のような設備を車室内に備えることが定められています。

  • 大人1人あたり長さ1.8m以上・幅0.5m以上の連続した平面を持つ就寝設備(乗車定員の3分の1以上の人数分。端数は切り捨て、乗車定員2人以下は1人分)
  • 10L以上の給水タンクと洗面台等、10L以上の排水タンクを備えた水道設備
  • 0.3m×0.2m以上の調理台とコンロ等による炊事設備

このほか、洗面台や調理台を使う床面から1,600mm以上(調理台等の高さが850mm以下なら1,200mm以上)の室内高や、設備の床面積などの要件もあります。就寝設備の数と室内高は2022年4月の改正で緩和されました。要件の詳細と登録区分ごとの違いはキャンピングカー登録の条件で解説しています。8ナンバーを希望する場合は、設計段階から要件を満たす仕様にしてもらう必要があるため、最初のヒアリングで必ず伝えましょう。

8ナンバーにしない選択肢も

ベッドキットや断熱、電装だけを追加し、元の貨物車や乗用車のナンバーのまま乗る方法もあります。この場合も、車検証の寸法や重量が変わる改造になると手続きが必要になることがあるため、施工内容が車検に影響しないかを事業者に確認しておくと安心です。

依頼先の探し方と注意点

対応している事業者の探し方

持ち込み架装は、すべてのビルダーが常に受け付けているわけではありません。公式サイトに「持ち込み架装」「持込架装」「車両持ち込み」といったページや記載があるかを確認し、対応車種と受付状況を問い合わせましょう。KYP:CSのようにハイエース、キャラバン、エブリイを中心に、他社購入車や中古車にも対応すると明記している事業者もあります。施工事例のページで、自分と同じ車種の実績があるかも確認ポイントです。

保証の範囲を確認する

保証は、架装部分とベース車両で扱いが分かれるのが一般的です。たとえばオーダーメイド中古車専門店は、自社施工部分の保証を納車から1年間とし、ベース車両本体の故障は対象外、他社や自分で改造した箇所も対象外としています。ベース車両のメーカー保証が改造後にどう扱われるかは、購入したディーラーに確認しておきましょう。

車両の状態を事前に伝える

すでに内装が改造されている車や、錆・雨漏りがある車は、追加の作業や費用が発生する場合があります。問い合わせの段階で、改造歴や車の状態を正直に伝えることがトラブル防止につながります。

納期は余裕を持って

製作期間は施工内容や車両の状態で変わります。KYP:CSの目安では、ヒアリングから納車まで合計で数か月かかります。旅行の予定に合わせたい場合は、早めに相談を始めましょう。

キャンピングカー専門店のスタッフとオーナー夫婦がハイエースの横で内装の打ち合わせをしている様子、図面と生地サンプル、写実的、文字なし

まとめ

  • 持ち込み架装は、手持ちの車や自分で手配した車をプロに預けてキャンピングカーに改造してもらう方法です
  • ハイエースの供給不足を背景に、大手ビルダーでも持ち込み方式を取り入れる動きがあります
  • 費用は架装の範囲で大きく変わり、公開価格では約50万円台から300万円台まで幅があります
  • 8ナンバーにする場合は構造要件を満たし、構造等変更検査を受ける必要があります
  • 保証の範囲、車両の状態、納期は契約前に必ず確認しましょう

車両を購入してから持ち込む場合は、購入前にビルダーへ相談するのが失敗しないコツです。複数の事業者から見積もりを取り、仕様と総額を比べて依頼先を選びましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 持ち込み架装は中古車でも依頼できますか?

対応している事業者はあります。KYP:CSは他社購入車や中古車にも対応すると案内しています。ただし、改造歴や車の状態によって追加費用がかかる場合があるため、事前に相談しましょう。

Q. 軽バンでも持ち込み架装はできますか?

事業者によっては可能です。KYP:CSはハイエース、キャラバンに加えてエブリイも対応車種の中心に挙げています。対応車種は事業者ごとに異なるため、公式サイトで確認してください。

Q. 架装にかかる期間はどれくらいですか?

内容によって異なります。SAny.VANは持ち込み車両で最短1か月(2024年2月の発表時点)、KYP:CSは製作だけで約2〜3か月を目安としています。

Q. 持ち込み架装をすると必ず8ナンバーになりますか?

なりません。8ナンバーにするには構造要件を満たして構造等変更検査を受ける必要があります。希望する場合は最初の相談時に伝えましょう。

出典・参考

※価格や受付状況、制度は変更される場合があります。最新情報は各事業者の公式サイトや国土交通省、最寄りの運輸支局でご確認ください。